白雪姫は寵愛されている【完】



「たくっ…、今のタイミングかよ?」


血だらけのナイフを持っているのは美琴さんだった。向かってきた美琴さんから私を庇う為に、仁くんが刺されたんだ。


「つーかなんでジンじゃなくてお前の妹狙えって…」

「ん?…ああ、」


朔也くんが美琴さんの持っているナイフを手に取った。


「最初からジン狙いなら刺されてない。白雪を狙えば確実だって信じていたからね」

「…変なとこは信用してんのな」


元々……私を狙っていたって事?
仁くんは…私を守る為に刺されたの?



「さあ白雪――――――、これで邪魔者は消えたね」



邪魔…者…って何?


仁くんを抱きしめ、朔也くんを睨んだ。ぼやけた視界の中でも何処にいるかぐらいなら分かる。



「……お前の妹睨んでくんだけど」

「ああ、それもまた可愛いだろ?」



笑い合う二人を無視して仁くんの手を握った。

…暖かい。息遣いも感じる。


急いで携帯を取り出し、119を押し通話ボタンを押す。
しかし横から取られ、手で口を塞がれる。


「っ…!」


朔也くん…!!


「すみません。妹が間違えて掛けてしまいまして。はい…はい。本当にすみません」

「んー!!んん゛ー!!!」


通話が切れる音がし、手が離れた。
携帯は朔也くんが持ったまま。


「っ、返してください!早く…救急車呼ばないと…!」

「駄目だよ。それじゃあ、殺傷事件になる。ミコトが捕まるだろ?」

「このままじゃ仁くんが死んじゃう!!」


朔也くんの言葉なんて聞こえなかった。