今日の晩御飯は、朔也くんのリクエストの日。
「肉じゃがなんて久しぶりだね」
「久々に食べたくなってさ。白雪の肉じゃがは美味しいから」
…私より朔也くんの方が料理上手なはずだけどなぁ。
私が作るより絶対美味しいはずなのに。
なんて思いながらぐつぐつ。
肉じゃがの隣で味噌を溶かす。
シンプルな豆腐の味噌汁だ。
味見用の皿に入れ、口に運ぶ。
…少し、薄めかな?
「朔也くん、味見してくれる?」
まだ一口分入っている皿を、隣いた朔也くんに手渡した。
「う、ん。いいよ」
笑顔で受け取り一口。
「健康的な味、だね」
「…やっぱり味薄めだった?味噌足すね」
朔也くんは申し訳なさそうに「お願い」と言った。
出来た料理を器に入れ、テーブルに並べる。二人で向かい合うように並べて椅子に座り、手を揃えた。
「「いただきます」」
朝と夜、二人揃って必ず食べるルール。
それはこのお家に来てから決まった事。
叔母さんの家にいた時はバラバラだった。両親が生きてた時もこうやって食べたのかもしれないけど。あまり記憶がない。
だからこそ、この時間が幸せ。私はよく一人で食べていたから。…あの時は朔也くん忙しそうだったから。こうやって一緒に食べるのも数えるぐらいだったかも。
食べ終えると、朔也くんが片づけを始める。
「お風呂行っておいで。片付けておくから」
「うん。ありがとう」
いつもの事。私より疲れてるはずなのに、必ず片付けをしてくれる。
完璧って、きっと朔也くんの事を言うんだ。そんな人が私の兄だなんて…私は幸せ者だね。


