離れた先輩が私の頭を撫でながら謝ってくれた。
「……難波、先輩」
ソファに戻ろうとする先輩の袖を掴む。
「ありがとうございます」
先輩のお陰で、自分の気持ちに気付けました。
私一人ではきっと気付けなかった気持ちに…。
「…っ、」
難波先輩の右手が一瞬だけ動いたが、左手でそれを止める。
「……それなら、いい」
微笑んだ。
どうしよう、自分の気持ちが分かったからかな?
すぐにでも伝えてしまいたい。多分、顔を見たらドキドキして言えないかもしれないのに。それでも今会いたくて仕方ない…。
そんな私に気付いたのか難波先輩が笑う。
「仁なら、まだ──────、」
「何の話をしているのですか?」
…昴くん。
入ってきたのは特攻服を着た昴くんだった。
「千雪さん、そろそろ帰りましょう」
「あ…で、でも」
まだ時間もある。
それに…仁くんとも会っていない。
「仁からか?」
昴くんは頷いて私の荷物を持ち、手を引いた。
「気を付けろよ。最近、麒麟がここ等をうろついてる」
「大丈夫ですよ。千雪さんも安心してください。僕が守りますから」
笑った。
……昴くん。
「千雪ちゃん、気を付けてな」
「は、はい…それでは」
お辞儀をし、手を引かれ出ていく。
…昴くんにも言わないといけない。
ちゃんと、言わないと。


