白雪姫は寵愛されている【完】




「気…にしないでください!あの、大丈夫ですので…!」


一歩下がり、頭を下げた。


「千雪は…、」


…なんだろう?
頭を上げると、手で顔を隠す仁くんがいた。


「俺が千雪の事好きだって知ってるよな?」

「へ…!?」



知ってます、思い出しただけで熱いです。



「……もうそんな目で俺を見るな」



そ、そんな目…ってどういうことですか…?


「言っただろ。男は勘違いしやすいんだよ…だからあいつ等も勘違いするんだろーが…」


そう言うと、また頭を撫でられた。
今度は撫でたというより、わしゃわしゃな感じだ。


「少しは考えてくれてんのか」

「か、かんがえて…いますけど…」


色んな事があってどうしたらいいのかわからないのが本音。

昴くんのことも。
…朔也くんの事も。


家に帰れば…朔也くんはいるのだろうか?
もし今仁くんとばったり会ってしまったら?



「千雪?どうした?」



優しく覗き込む仁くん。
私は左右に首を振った。


「何でもありません。送ってくださってありがとうございました」


知るのが怖い。


「ああ。また明日な」

「はい…また明日…」


仁くんに聞いてもしそうだったら、私はどうしたらいいのか分からない。




この時に聞けていたら。
この時に恐怖よりも先に言えていたら。


きっとこんな残酷な事は起きなかったはずなのに─────────、