白雪姫は寵愛されている【完】



「元カノの事は白藤さんに意識して欲しくて…。偶々告白されたから付き合ってただけなんだ。ただ俺も男だからさ、ヤれれば誰でもよかったのは認めるよ。まあそれがバレて別れたんだけど。でもそのお陰で白藤さんは俺の事、意識してくれたんだよね?」


「な、なに…を言ってるの…?」


「え?だから俺は一途で、白藤さんだけがずっと好きだったって事だよ」



表情一つ変えずに言う和也くんに恐怖を感じた。
でもここでハッとした。


待って…ここには美雪ちゃんが…!


ガサガサと背後の木々から音がした。



「み、みゆきちゃん!!」



何処かへ走っていく後姿に向かい叫んだ。

後を追いかけたかったが、手を離してくれない。


「っ…離してください!」

「なんでだよ!俺と付き合うんじゃねーのかよ!?」

「ち…違います!」


叫ぶと、和也くんは突然変貌した。
地面に叩きつけるように振り払ったのだ。



「なんなんだよ!期待させといて!!」



痛い…。


「俺と付き合えよ!!!!」



ハァハァと息をしながら近づいてくる和也くんの姿は、人気者だと言われていた姿とは真逆な物だった。



「本当は俺の事好きだって分かってる。素直になれよ…!」


「ご…めんな…さい…!」



震える身体を無理矢理起こし駆け出した。
何度も手を引かれそうになるが、運よく抜け出せた。



「お前から気のある素振りしてたんじゃねーかよ!!ふざけんな!!!」



目尻に涙を溜めながら、振り返ることなく走り出した。