あの時はこんな風に隠さず過ごしていた。髪も今よりも短くてでも相変わらず本が大好きだった。
「───────千雪!」
背後から抱き着いて来たのは一番仲のいい友達、美雪ちゃんだった。
「おはよう、美雪ちゃん」
「あっれ、また違う本読んでる?」
これがいつもの朝の会話。
だけど今日は少しだけ違ってた。
「うん。この本は…」
「それより聞いて聞いて!」
いつもより大興奮の美雪ちゃん。
本を閉じ、耳を傾ける。
「隣のクラスの和也くん!彼女と別れたんだって!!」
隣のクラスの和也くん、とは。容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群の三拍子が揃った人気者の男子。
確か、先輩の彼女さんがいるからって言って告白断ってばっかりな人…だったかな。彼女さん思いでも人気の理由だったはずだけど…。
「なんかね、喧嘩して別れちゃったらしいの!これってチャンスあるよね!?」
そう言えば美雪ちゃんも和也くんの事好きだったね。
恋する女の子はキラキラしている。美雪ちゃんは今、本に登場する恋する女の子と同じ気がする。
「それで…千雪!お願い!協力して!」
「…え?わ、わたし!?」


