美雪ちゃんが見えなくなった頃。
仁くんは私の手を握った。
傷が出来た方の手を優しく触り、ワイシャツの裾を破く。
「じ、仁くん!?なにを…!」
「粗治療…悪い。こんなんで」
「い、いえ。そいう事じゃなく…!」
それなりに高い制服なのに…。
大袈裟に、だけど丁寧に巻かれてしまった。
「…あの女とはどういう関係だ?」
「……と、友達だったと、思います…」
「思う?どういう事だ?」
友達…最初はそう思ってた。
てっきりそうなんだと。
「…話してくれないか?」
話す…昔の事を、ですか?
「わ、たし…」
──────嫌われてしまいそう。
…仁くんに嫌われたくない。
頭に手が乗った。
「言いたくないなら無理に言わなくていい」
「…っ、」
優しく撫でてくれた。
本当は聞きたいはずなのに。
歩き出そうとした仁くんの手を取り立ち止まる。
「……き、嫌いにならないで…くれますか…?」
そう言うと、驚きすぐに笑った。
「俺が千雪の事、嫌いになるわけないだろ」
手を握り返してくれた。


