「っっ…、」
私の誕生日で開いた。
吃驚した。
違うと思いながらやったから尚更。
……どう、しよう。
開くと思わなくて、躊躇する。
こんな事しちゃいけないと分かっている。
それなのに…、
震える指で画面に触れる。
…ごめんなさい。朔也くん。
アプリは元々携帯に入っていたものと、唯一ダウンロードしてあるのはメッセージアプリだけ。
画面もかなりシンプルで、メールアプリとメッセージアプリ、電話のアイコン、それから連絡先と書かれたアプリの四つしかなかった。
連絡先を開く。
沢山の名前がずらりと並んでいた。
いくらスクロールしても終わりが見えない。
「ここが俺の会社だよ」
昔見せられたホームページ。
会社の電話番号も記載されていたはず。
あの日以来、私は一度もホームページを開いた事は無い。
自分の携帯であの時の記憶を頼りに会社を探すが出てこない。
同じ会社名はあるのにあの日に見たホームページと違う。
ア行。
阿久津 宏の名前。
電話のアイコンを押し、留守番電話のボタンをタップした。


