白雪姫は寵愛されている【完】



朔也くんの携帯?

…あれ、でも。
よく見ると色が少し違う気がします。


もしかして、会社支給の携帯とか?


それなら私が知らなくても仕方ない。


…あれ?でもここにあるって事は…今頃探してるってことでしょうか?
は、はやく朔也くんに連絡してみないと…!


慌てて白藤朔也の名前までスクロールする。
電話ボタンを押そうとした瞬間だった。


バイブ音が鳴る。マナーモードになっていた朔也くんの携帯から。着信の文字。


ディスプレイに表記されたのは─────、



アクツヒロ。
阿久津 宏。


フリガナがふられた、聞いた事のある名前だった。


”はい!お近づきの印♪”


キャンディをくれた茶髪の男性。
まだ食べていないあの飴を思い出す。



………同姓同名な人ですよね。
だって朔也くんの知り合いなら知らないはずが…、



─────私…、
朔也くんの知り合いも友達も知らない。



バイブ音が止まる。
不在着信と表示された。



その下に、



”留守番電話が録音されました。”と出た。



留守番…電話。



恐る恐る手を伸ばし、震える手で電源ボタンを押す。
すぐに出来てきたのはパスワードを入力する画面。



数字、四桁。


パスワード…朔也くんの誕生日?
お父さんとかお母さんの誕生日?


全部試したが開かなかった。


携帯のパスワードって確か五回間違えると当分使えなくなったはず、その間に戻って来たら私が見てたって事がばれてしまう。


人の携帯を勝手に見るだなんて…酷いですよね?


止めかけた手。
でもまたボタンを押した。


もう一つ、試してない数字があった。


四回目…これで開かなかったら辞めよう、そう思いながらボタンを押した。