白雪姫は寵愛されている【完】


「え、絵文字!じ、じん…くんから!は、はじめての…!」


すぐにマークを付けて保存してしまった。

マークだなんて、初めてつけた。
その機能だって初めて使った。


使う事が無いと思っていた機能。あった事すら忘れていた。



「……ふ…ふふ…、」




携帯をぎゅっと握りしめ、顔が緩む。

明日も学校で、早くお風呂に入って寝なきゃいけないのに…何度も同じメールを確認してしまう。ソファに寝転び、またメールを確認する。


仁くんから初めての絵文字…嬉しい、──────あっ!!


メールボックスの未読メールを見てハッとした。
みんなに連絡していなかったと。


わ…忘れていたなんて…!
私ってば何をしていたんでしょう!?

何百通も来ていたメールを忘れていたなんて最悪過ぎます!


一人一人に謝罪文とお礼を書き留める。
難波先輩、颯太くん。…昴くん。


そうだった…わたし。
昴くんと仁くんに──────、



「あっ、」



手から滑り落ちた携帯。
ソファの下に入り込んだ。

伸ばせば簡単に届く位置にあるみたい。
手だけを下にいれた。


手前で良かった。
届かなかったらほうき持って来ないといけないから…、あれ?



これ…私の携帯じゃない。



同じ色だけどキーホルダーも付いてないし、機種も違う。もう一度ソファを覗き込むともう一つ携帯があった。

取ってみると自分のはこっちだと分かった。