「白雪、こっち見て」
そう言われ顔は向けたが、目だけは逸らした。
朔也くんのため息が聞こえる。
「最近、俺の事無視してるね。俺の事嫌いにでもなった?」
「そ、んな事ないよ…」
嫌いになったんじゃない。
…怖くなっただけ。
朔也くんが私の肩を掴み、首筋の方に顔を近づけた。あまりの近さにぎゅっと目を瞑る。
「……男物の香水の匂いがする」
ビクッ!
「白雪は香水しないよね?
俺はつけてるけど、こんなのはつけたこと無い…どういうことか教えてくれる?」
香水…そんなのどこで……。
そうだった今日は、集会所に行ったんだ。いつもより沢山の人がいて、色んな匂いがしていたから。
煙草の香りと男の人の香水の香り。
仁くんの使っている香水かもしれない。
でも……それを素直に言えるわけない。
「と、ともだちの」
何とか絞り出す言葉。
「友達?それって男?」
「ち、ちがうよ!」
「この香水、男物だって言ったよね?」
「彼氏の…香水をつけたんだって言ってたの」
「…女が?男物の?」
頷く。
まだ納得してないみたいだったけど、朔也くんも頷いた。
よ、よかった。前にみた本の一節にあった言葉だったけど、うまくいったみたい。


