───────っ、
「へ…?」
空気が抜けたみたいな声に仁くんはフッと笑った。
「俺は三年前のあの日から、白藤千雪に惚れてた。だから探してた、千雪を。…本気で傘を返す為だけに、探してるとでも思ったか?」
どうしてそんなに格好良く笑うんだろう。どうしてそんなに愛おしい、みたいに私を見るんだろう。
「…っ、わ、たし…そんな…大したことなんて…。そ…それに、私こんなですし、取柄なんて何もないですし、泣き虫で弱虫で…可愛くも無いですし…、私なんかより──────、」
頬に指が触れた。
「俺の好きな奴の悪口言うな、千雪」
真剣な表情。
冗談じゃない、本気の目。
「っっ…!」
全身が一気に赤くなった気がする。
恥ずかしい。…恥ずかしくて溶けてしまいそう。
心臓がうるさくて、はち切れそうで、今にも逃げ出したいのに。
それなのに………。
この人から逃げたくない。
そう思ってしまった。


