これ以上は無理です…。
近すぎますし、恥ずかしい…。
「…っ、ね、ねつが無くてよかったです…」
「赤くなるのは全部千雪のせいだ」
わ、わたし…!?
「ご、ごめんなさ───…!」
逸らしていた顔を向けると、仁くんはいつもの優しい笑顔を見せた。そして私の腰を引き寄せて手を引く。
「やっと見たな」
「ッ───…、」
耳が熱い…。
耳元で言われた声で、耳たぶまで真っ赤っか。
自分で分かる、だって凄く熱いから。
見られるのが恥ずかしくて涙目になった。
「ッ、仁くんは…いじわるです…」
私も赤くなるみたいです。
仁くんといると、常に。
固まった仁くんが溜息をついた。
「…わかってやってんのか」
わかって…?
何をだろう?
首を傾げると、また溜息が聞こえてきた。
「…あ、あの…ごめんなさい…」
何か失礼な事しちゃったのかな?
頭を下げると、仁くんは違うと言った。
「そ、それならどうしてですか?」
溜息ばっかり…。
仁くんは何か考えるような仕草を取ると、頷いて私の方を見た。
暗い公園、一本の街灯に集まる虫。大きな時計の針の音、───────全てが聞こえなくなった。
「俺は千雪の事が好きだ」


