白雪姫は寵愛されている【完】

「…優しくしようと思えば思うほど、空回りになる」



そんな、仁くんは凄く優しい人なのに。



「悪い、怖がらせてばっかで」



確かにたまに怖い時がある。
でも、それは本当に稀で…、



「私は…仁くんと一緒にいれなくなる方が……怖くて…嫌です……」



仁くんはいつも優しく接してくれて、守ってくれて、助けてくれて…。

怖い口調で話されるのは、やっぱりまだ慣れなくて怖いけど…それでも一緒にいたいと思うのは、わがままですか?



「…ッ、」



あ…もう離れるんですね。


急に離れたことに少し残念な気持ちになりつつ、顔を上げた。



…仁くん?
顔が凄く真っ赤…、


も、もしかして!


「ね、熱でもあるんですか!?」


慌てて額に手をあてた。
熱を帯びていて熱い。


どうしよう、風邪薬が良いのかな?それとも頭痛薬?あ!でも薬の入った鞄は車の中に置きっぱなし…。


「千雪、」

「は、はい!」


名前を呼ばれ、仁くんの方に顔を向ける。


顔がよく見えた。風で乱れた前髪の間から、仁くんの表情がよく見えた。



ドキッ、



真剣な表情。さっきまで顔が真っ赤っかだったのに。今度は私が赤くなる。



「……俺も千雪の傍にいたい」


「…じ、じんくん?」




そんな顔で言わないでください…。
体も顔も全身が熱くなる。



「…千雪、顔を逸らすな。俺を見ろ」

「む…無理です…」