むしろ…私が本当に嫌なのは…。
「仁くんに嫌われるのが…いやっ…で」
嫌われるのが怖い。そう思ったのは中学時代。
目を見て話せなくなったのもその頃だった。
あの時よりも怖いと強く感じてしまうのは、きっとあの時の気持ちが思い出せなくなっているからかもしれない。
「…っ、千雪、泣くな」
ポロポロと落ちていく涙はどうしても止められない。
「私…大丈夫…です…」
道具として傍に置いてくれているとしても。嫌われていても。
仁くんの隣にまたいれるのなら…それでも───────、
「───────頼む、泣かないでくれ」
仁くんの香りが体を包んだ。
甘くて大好きな香り。
背中に回った手も。暖かさも。全部大好きなもの。
「千雪の事になると、どうしても歯止めが効かなくなる」
回された腕が強くなる。


