車に乗り込んで、一度倉庫に戻ったけれど。私はすぐ帰ることになった。多分今日の集会の事とか、話し合いとかあるんだと思う。


仁くんと…帰りたい。
我儘だって分かってる。

だけど、仁くんとお話したい。一緒に居たい。


そっと手を伸ばす。



「昴、行ってこい」



仁くんの言葉にズキンと胸が痛んだ。


……ッ…え?


昴くんと居るといつも嫌な顔をしていた仁くん。
必ず送り迎えをしてくれたのは仁くん。



「分かりました。行きましょう、千雪さん」




手を出した昴くんの横を早足で通り、背中を向けた仁くんの特攻服を引っ張った。


「じ…じんく…、」

「…早く帰れ」


振り解かれた手。


…手を繋いでくれたじゃないですか。
私の名前呼んでくれたじゃないですか。

あの女の人は良くて、どうして私は服を触ることすら駄目なんですか…?




「ッ…き……嫌いになったのなら…そう言ってくれないと、わ…わからない…じゃないですか…」




仁くんはもう私の事が嫌いなんですよね。



「わた…私…一人で、帰れます…」



ドアを勢いよく開けて走り出した。


「っ!?千雪さん!」


みんなが私を呼ぶ声がする。

ごめんなさい…ごめんなさい。
今は誰とも話したくないんです。


振り返らず走り続けた。