”あの日も、先輩の女に手を出したとかで殴られた。…実際は逆で、女が俺に寄ってきただけだったけどな”
もしかしてあの事じゃないか、そう思ってしまった。
「あ、でも仁さんが勝ったらしいぞ。それで総長交代したって聞いたことある」
…勝ったなら違うかも。
あの時の仁くんはボロボロだったから。
「でも白藤を連れてくるようになった」
女性禁制。
それを私が来た事で破ってしまった。
…そっか。だから初めて難波先輩に会った時慌てていたんだ。
「それが麒麟に情報が言って、これを使って俺達を脅すつもりなんじゃないかって、昴さんが言ってたんだ」
「私を使う…?」
首を傾げる私に颯太くんはニコッと笑った。
「俺達、白藤に弱いから」
颯太くんは私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ほんとは、こんな所に白藤を連れて来たくなかったんだ。でも…俺達が居ない時に麒麟に狙われたら大変だろ?だから連れて来たんだ。ごめんな、怖い思いさせてさ」
手で解し整えながら、左右に首を振った。
「ううん…私の為にありがとう」
確かに怖かったけど、話を聞いて納得した。
場違いな私を連れて来たのは、私を守るためだったんだ。


