白雪姫は寵愛されている【完】


「君、名前はぁ?」


キャンディをマイク替わりのように私に向ける。


「し、白藤千雪です」

「…え?マジ?」


間を開けて笑った。
響く笑い声。



「ハハ!そっかぁ~…。君があの有名な、白藤千雪、かぁ…」



有名…?



「フフ…ごめんねぇ。急に笑っちゃって。吃驚したよねぇ。あっ、僕も自己紹介するね?僕の名前は阿久津 宏(アクツ ヒロ)、宏くんって呼んで?」



手を出された。

握手の意味なんだろうけど…。
私は首を左右に振った。

実はちょっとだけ昴くんの件でトラウマになっていた。

宏くんは肩をすくめ、内ポケットから何本かキャンディを取り出した。


「はい!お近づきの印♪」


その内の一本を私にくれた。
いちごみるく、と書かれた棒付きのキャンディ。


「あ、ありがとうございます…」

「いいえ~~♪」


宏くんはニコニコ笑い、新しいキャンディを咥えた。
鼻歌交じりで「聞いてもいい?」と言ってくる。



「千雪ってさぁ、朱雀とはどういう関係なのぉ?」

「そ、それはどういう意味でしょうか…?」


宏くんはうーんと唇を尖らせた。そして左手で丸を作り、人差し指を指す動きをした。




「例えばぁー…性欲処理班とか?それかぁ脅されて仕方なくとか?あ~それとも誰かの彼女だったり?」



っ…!!



「そんなのではないです!」

「わっ!?…突然大きな声出さないでよねぇ、吃驚したよ」

「あ…すみません」



思わず出てしまった。




「じゃあ、千雪は朱雀の何なの?」