「んっ…、」
角度を変えて、何度も重なる唇。
息、苦しい。
いつ終わるの…?
止まらないと思ったら刺していいだなんて…出来るわけないです。
もしかして、わかってて言ったんですか?
「───っ…!?」
く、くちのなかに…何か入って…。
で…でも今暴れたら刃が当たって…怪我でもしたら大変。
少しして、口の中に入ってきたのが仁くんの舌だと分かった。ようやく離れた頃には酸欠状態だった。
「……っ、止まらなったら刺していいって言ったろ」
「っっ…??」
出来ないって分かってて持たせたんじゃないんですか?
仁くんの指が口元を拭った。
……糸、引いてる。
もう一度顎に指が触れた。
驚いて体がビクッとする。
「…俺が、怖くなったか?」
…え?
悲しそうな顔だった。
じんくん…?
「無理矢理して怖かったよな。でも…もうしない安心してくれ」
無理矢理?違います。嫌だったとか思ってない…。
そう言いたいのに、声が出ない。
もしかしたら酸欠で出ないのかもしれない。
「…悪かった」
首を横に振ろうにも、全部肯定したように見えてしまうのだろう。何度やってもうまく伝わらない。
ち、違うんです。
私…嫌じゃなかった。
吃驚したけど、嫌じゃなかったんです。
カッターを落とし、ワイシャツにしがみつく。
こんなに握ったらしわになってしまう。
ごめんなさい…。
「千雪、どうした?」
あ、あの…私、仁くんとなら…もう一度。
頭を撫でられた。
伝わったの…?
「俺に気を遣う必要はない」
そう言うと、ブレザーを私の肩にかけてくれた。
「っ───、ケホッ、」
声に出そうとすると咳が出る。
「……俺と一緒に戻りたくないだろ?昴…いや慶を呼んでくるから待ってろ」
ちが───…!
「ここで待ってろよ」
そう言うと、教室を出て行った。


