白雪姫は寵愛されている【完】



指が目尻を拭う。



「…悪い。また怖がらせたか?」



心配そうな顔をしている。


違います…違うんです。
怖いだなんて思ってません。


どうして泣いてるのか…私でもよくわからないんです。


滝のように流れ出した涙を見て、驚き焦る仁くんが必死に袖で拭ってくれ、何度も謝ってくれる。



「っ、違います…。仁くんの、せいじゃない…私が…、」


「…千雪?どういう事だ?」



頬を包む両手に添えるように触れた。



「私、おかしいんです…。

仁くんと居るとドキドキして、自分じゃないみたいに熱くなって…。
でも…は、離れたくなくて、隣にいたくて…泣きたくなって。

どうしてですか…?仁くんと離れるのが辛くて…仕方ないんです─────、」



どうしてなのか、わかりません。


ただ…嫌われてしまったらどうしようとか。もっと傍にいたいとか、近づきたいとか…考えてしまうんです。



誰もいない教室、誰も通らない廊下。唯一聞こえてくるのは、外にいる人達の楽しそうな声と時計の秒針の音だけ。


怒ってる、んですか?
私が変な事を言ったからですよね…?


さっきまで、ドキドキで痛かったのに。
…今度はズキズキして痛いです。



「ご…ごめんなさい…変な事、言って…」



なんでこんな事、言っただろう。


迷惑してる。ただでさえ迷惑かけてるのに。



「じんく───…、」




顔を上げ、目を見開いた。



物凄く赤くなっていたから。




「…ばか、やろ…自惚れるだろ…」




片手で覆い隠した。

耳まで、真っ赤になって…。



───────初めて頬に触れた。