なんでそうしたのか、わからない。
ただ離れたくなかった。このまま抱きしめていてほしかった。
「……俺は…千雪を嫌ったりしない。さっきは怒って悪かった。ただ…、ああいうのはもうしないでくれ」
キスの事、かな?
無言で頷く。
ああ、でも…。
「仁くんがしてくれないのは、少し寂しいな…」
「…………………は?」
驚いた顔をする仁くんに私も釣られた。
…あれ?今の心の中で言いました…よね?もしかして声に、出してた…とかじゃないですよね?
一瞬で顔が赤くなったのは仁くんの方だった。
「ッッ、!」
や、やっぱり!
声に出してたんですか⁉
仁くん以上に顔が真っ赤になった。
まるで湯でタコになった気分。
「ち…違うんです!ここ、心の中で…思っただけで…!その、えっと」
「…それは、俺は期待していいってことだな?」
期待…?
首を傾げた私に、仁くんはフッと笑って頭を撫でる。
「俺にだけ、そう思ってるのか?」
…仁くんにだけ?
俯いて小さく頷く。
だけど、その後の反応が何もない。
「…お、かしいですよね?私もおかしいと思ってて…こんな…」
ドキドキうるさい。鼓動が聞こえちゃいそうなぐらいにうるさい。
最近の私は凄く変。
仁くんと一緒にいるとドキドキするし、顔が熱くなって恥ずかしくなる。
だけど、どうしてなんだろう。
───────離れたいと思えないの。
「千雪?どうした?」
仁くんが滲んで見えた。


