白雪姫は寵愛されている【完】

何処に向かうのか分からないまま、突き刺さる視線に耐えかねて仁くんの胸に顔を埋めた。


着いたのは、どこかの空き教室。
静かな教室の教卓の上に座らせられた。

いつもよりも少しだけ私が見下ろしてる。


……何も話さない。


ただ沈黙だけが続く。


その間も不機嫌な顔のままだった。


私…やっぱり怒らせちゃったんですね…。
このドレスだって、似合いませんよね?


あんな風に…怒られたことなかった。いつも、いつも…私は仁くんを困らせてばっかり…。




「…ごめん…なさい……」

「…なんで、千雪が謝るんだ?」



手が優しく触れる。



なんで、でしょう?
自分でもよくわかりません。


でも…、



「仁くんに、嫌われたくないんです──…、」




困らせてる。
分かってるんです。

私が仁くんを常に困らせる事なんて、とっくに分かっているんです。



「私が…負担になってるのは、知ってるんです…。弱くて…すぐに困らせてることも、知ってます」



私は卑怯な人間です。
自分でも分かっている癖に…。


「それでも…嫌われたくないと思ってしまうんです…、」


仁くんにだけは嫌われたくない。

嫌われても文句は言えないぐらい迷惑をかけているのに。


でも…、仁くんが私を嫌ったらって考えただけで、胸が痛い。まるで棘が刺さっているかのようにズキズキする。



「…っ、千雪」



抱きしめられた。


ふわっと香る仁くんの匂い。
ちょっとだけ早い鼓動…。


その時、私は初めて背中に手を回した。