白雪姫は寵愛されている【完】

「あれは演技で、実際にはしてないです。でも、勢いで白藤のほっぺにはしました…けど。…俺が独断でやりました。すみませんした」

「…演技?颯太お前なんのつもりで、」

「あ…あの…!」



怖いけど勇気を振り絞って。



「練習の時から角度でしてるように見せるやり方を…して、いたんです…本当です…」



仁くんは小さな声で「分かった」とだけ言うと、私の手首を掴んだ。吃驚して顔をあげると、まだ眉間のしわが取れていない。


「………千雪、来い」

「仁さん!俺が…!」

「分かったと言っただろ」


それだけ言うと、勢いよく手を引かれた。



「きゃぁ!」



強く引かれた手。

ドレスの裾に引っかかり、倒れる形で胸に飛び込むとそのままお姫様抱っこされる。



「あ、あの!仁さん!何処に…!」



歩き出そうとした仁くんが立ち止まり、振り返る。



「ドレスは弁償する」



とだけ言って、歩き出した。