クランクアップ。
全員で舞台の上に立ち、お辞儀をする。

拍手喝采で何とかうまくいったらしい。


舞台裏。


他の人達は片付けをしていて、二人っきり。


「白藤、中々いい演技だったぞ!」

「そ…颯太くんの方が上手かったよ」



…恥ずかしい。

唇近くにされたキス。頬だったけど…結構際どい所だった。



「あ、ご…ごめん!勢いでさ…」



顔を赤くした颯太くんが焦った様子で言う。


「大丈夫、だよ」


確かに吃驚したけど。役に入り切り過ぎたんだと思うし…。


バンッ!!

突然舞台裏のドアが開く。


…じん、くん?


どうしたんだろう?
少し機嫌悪そう…。


仁くんは黙って、私の前に来た。



「仁くん?どうか、したんですか?」

「……あれはどういうことだ」



どういう…?



「えっと…、何のことで───…」

「演技でキスするのかって聞いてんだ」



怒ってる。眉間にしわが寄っていて、かなり怒っているのが目に分かる。



「千雪は誰にでもそんなことが出来るって事か?どうなんだ、千雪」



低い声。

いつもの仁くんじゃない。
昴くんに向ける声よりも低い気がした。


怖くて何も言えず、震える私に構わず怒鳴る。


「言え!」

「仁さん!」


颯太くんは、仁くんの前で頭を下げた。