「き…きれいな綺麗なお姫様」
振り返ると側近役の男子生徒。
頬を赤らめ、私の方をチラリと見るだけ。
「ここ…ここは足場が悪いですので、お手を…」
…こんなセリフ合ったかな?でもそんなこと言ったら、颯太くんもだもんね。
手を乗せようとした時、隣から手が出てきて掴まれた。
「そ……お、おうじさま?」
あ…危ない。
名前を言う所だった。
「僕が手を取りましょう。さあ、姫。こちらへ」
本物の王子様みたい。
ラストシーン。
白雪姫が魔女から貰ったリンゴを食べた後。
ガラスの棺桶に身を納めた白雪姫をみて嘆き悲しむ王子様。
……の設定だったはずだけど。
泣き声が聞こえるわけでも何でもない。ただただ静かで。私の頭を撫でる颯太くんがいる。ずっと目を瞑っているから、何が起こってるのか分からない。
…そろそろキスシーンのはず。
片目だけでも開けてみようか、な?
チラッと目を開けるつもりだったけど、完全に目が開いてしまった。
「っ…!?」
「ん?」
慌てて目を閉じなおす。何もしてないと思っていたけど。思いっきりしていた。私の髪に何度もキスしてた。
こ、これ…どうすれば正解なんでしょうか…?
颯太くんの手が頬に触れる。
「姫、僕はあなた無しでは生きられない」
───────唇が、触れた。
……え…?
目が開く。
颯太くんが微笑む。
「おはよう、僕のお姫様」
「…っー…、」
そう言って、私の頬にキスをした。


