「…シャア!!ギリセーフ!!!!」
「そ、そうたくん!自分で歩ける…!」
「喋るとした噛むぞ!」
前にもあったよ!こんな事…!
開演ブザーが鳴ってから会場に飛び込んだ。その間ずっと、私は颯太くんの脇に挟まれ、運ばれていた…ドレス姿の私の事を。
そして走り回った颯太くんは王子の姿をしていた。
うぅ…前髪上がっているの。すごく怖い…。
「ごめんなさい、やっぱり髪は…」
怖くて無理なの…。
俯く私に何かを察したのか颯太くんが呟く。
「白藤、嫌だったか?」
「…他人の目を見るのが怖いの、」
「なら、俺だけ見てて。
それ以外は見なくていいから。
───────それでも怖いなら、このまま帰る」
怖い。今も怖い。
でも…ここまでやってくれたのに。
首を左右に振る。
それを確認した後、脇に挟んでいた私をその場に降ろす。
唇を緩め微笑む颯太くんが艶っぽく見える。
私の前に跪き、手の甲にキスをした。
硬直する私と口をあんぐり開けた会場の人達。そんなことを気にも留めず、私に笑顔を向けた。
「あなたを見つけたあの時から、僕はあなたの虜です。誰にも渡したくない────、」
そう言うと、軽く小指を噛んだ。


