白雪姫は寵愛されている【完】

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黄色い歓声が演劇ホールを包む。女性達の視線の先に居るのは、朱雀の幹部だった。


映画館のように席が並ぶホールで、一番見えやすいと言われる真ん中の列。その舞台の中心側に三人が座っていた。


女性達はその周りを座りたそうにしていたが、三人のオーラが彼女たちを遠ざけていた。



「千雪ちゃんの男装、どんなのか楽しみだな」


「そうですね。ですが、ドレスの方が見たかったですね」


「…お前等は見なくていいだろ」




八神を挟むように座る、難波と久我。



「俺だって千雪ちゃんの事見たい」


「僕も見たいです。千雪さんですから」


「…チッ、なら散れ」


「何言ってんだよー。ここ以外にいい席ないだろ~」


「仁は真ん中ですし。いいじゃないですか」


「…チッ、」




そうこうしている間に、開演のブザーが鳴った。ゆっくりと、ベルベットの真っ赤なカーテンが開く。




「あれ、誰もいねー…」




難波が言った。

舞台の上には誰もいない。
あるのは城のセットのみ。

ざわざわと会場内が騒ぎ始めた。



「千雪は?」

「誰もいませんね」

「どうなってんだー?」



三人も不服そうにしていた。




────その時、




会場、後ろの入り口が開く。


その場にいる全員が振り向き、三人は気の抜けたような声を出した。




***