白雪姫は寵愛されている【完】

***



まるで貴族のような豪華なドレスを身にまとった文月がいた。化粧までされ、別人のよう。



「きゃあ!颯太様!とてもかわいいです!」

「…なんでお前がその恰好してんだ」



学級委員長は制服ではなく、白の貴族衣装を着ていた。
委員長は眉をしかめながら文月に言う。



「それが…白藤さん。やっぱりしたくないって言ったんです…なので、私が代わりにする事になりました…、」


「は?白藤が?」


「はい。今も更衣室にこもって出てきません…」



それを聞いた文月が女性用の更衣室へ向かい、ドアノブに手を掛ける。それを食い止めたのは委員長だった。



「あっ!駄目です!颯太様!!ここは女性用…」

「白藤!!おい!出て来い!」



その手を振り切って入る。
だけど、誰もいない。



「白藤さん?…え!?どこに…!!」



慌てた様子の委員長が中に入った。ぎりぎり人が入れそうな縦長のロッカーの中をくまなく開け、いないことを知らせる。



「…白藤さん、そんなに嫌だったんでしょうか?」




俯く委員長。



「でも…開演まで時間がありません。こうなったら…私と颯太様で────…!?」




顔を上げた時、既に文月の姿がなかった。




***