───────当日、


土日で行う学園祭。

だけど朔也くんは仕事があって来れないらしい。最初は来る気満々だったらしいけど。直前に突然電話が来て、がっかりした様子で会社に向かった。


そして隣にいる仁くんに視線が向く。


朝の車内。
いつもの仁くん。


すごく眠そうな顔してる。瞬きが少し重そう。

目を閉じて、開ける速度が遅い。


…ふふ、仁くんでもそんな表情になるんですね。



「…なんだ?」



声を掛けられた。
どうやら見過ぎたみたい。


「な、なんでもありま…」



顔が近づいた。
────ビクッ!


「?、顔が赤いな」

「あ…あの…」


顔が…近い…。


顔の前に手を出し、左右に振った。


「ひゃぃ!?」


指を噛まれた。
吃驚して動きが止まる。


「…細い」

「細…く、ないです…、」


触れる手。重なって絡む指。自分の手と私の手を比べるように手のひらを合わせた。


………おおきい。


一回り大きい手。ゴツゴツした、私とは違う指。手首もこんなに違うんだ。



「千雪は…小動物みたいだな」



小動物…?



「ハムスター…いや、うさぎだな」

「じ、仁くん…私は動物ではありません……」



少し黙って、考えて、仁くんが口を開いた。



「そうだな。千雪の方が可愛いな」



ま…またそんなことを…!

お世辞でも恥ずかしくて、胸がきゅーっとしてしまう。


どうしてこうなるんだろう。
どうして…こんな暑くなるんでしょう。

勉強不足です。
全く分かりません…。



「千雪?」



名前を呼ばれる。それだけで胸がドキドキする。顔を見たらそれ以上に鼓動が高くなる。



「み…見ないでください」



払った拍子に仁くんの頬に当たった。ペチッと音がした。



「…あっ、」




サーっと全身の血が引く感じがした。