白雪姫は寵愛されている【完】



「…たくっ、誰だよ。こんなとこに、紙置いた奴。…って。俺か」


持っていたのは蛍光ペンが滲む紙。



「ごめん。白藤。大丈夫か?」



颯太くんに抱きしめられるように守られてた。



堅い胸板、大きな手。可愛い寄りの…とか言ってたのは自分自身なのに。

やっぱり男の人で。私よりも大きいんだと思うと、少しだけドキッとした。



「白藤?…もしかしてどっか怪我してんのか!?」

「だ、大丈夫だよ。ありがとう…!」




急いで離れる。

私より王子っぽい。当たり前だけど。やっぱり颯太くんがなった方がいいんじゃ…。



「白藤、ごめんな」

「え?ううん。私は大丈夫…颯太くんは?怪我、ない?」

「ん?ああ…それは、うん。痛くねーし大丈夫。そっちじゃなくて、その劇の事」



怪我してなかったみたい。良かった。


「俺覚え悪いし…それに、下手くそだろ?」

「そんなことないよ、私だって…」


……颯太くん?



「……白藤、俺なんも出来ないんだ。喧嘩以外」



寂しそうな声と表情。



「俺勉強も出来ねーし、すぐ迷子なるし、特別何かに特化してるわけでもない…。唯一出来るの喧嘩だけ…ほんと、俺って、ミスったよな。生まれてくるとこ…」



颯太くんの隣に座って袖を掴む。


「颯太くんは…もし私が同じ事を言ったらどう思いますか?」

「は!?そんな事言ったら駄目だ!白藤!」

「…なら、私も同じ気持ちです」


目を見開く颯太くん。



「颯太くんには”喧嘩”があるでしょう?

誰だって喧嘩が出来るわけでも強いわけでもない。でも颯太くんは強いじゃないですか。みんなが出来ない事が出来るって凄い事だと私は思っているよ」



「っ…俺、初めて言われた。喧嘩が強いのが凄いって」