白雪姫は寵愛されている【完】




「で、でも…仁くんが欲しいと言うなら差し上げます…、」

「俺がハートなんか付けると思うか?それに俺が言ったのはこっちの事な」



指さされたのはバッグの方だった。


「十字架の方ですか?」

「ああ。最初っからそのつもりだったけどな」


慌てて取って、俯きながらキーホルダーを渡した。



「ん、ありがとな」



そう言って頭を撫でてくれた。



「い、いえ…そんなものでよければ…」

「そんなものなわけないだろ。千雪とお揃いだから、な」

「っっ…、」



どうして嬉しそうに言うんですか。
そんなの、ドキドキしてしまう。


この間からずっとおかしい。
何かの病気なのかな…?


目の前で十字架のキーホルダーが揺れた。私と同じように携帯に付けていた。


”カップルや友人と家族と合わせて持とう!”
そう書かれていたタグを思い出す。




「大切にする」




顔が熱くなりパタパタと手で仰いだ。



「暑いか?」

「ひゃっ!?」



近くに顔があって吃驚した。
慌てて離れる。



「千雪?」



仁くんと居る時だけどうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。どうして暑くなるんだろう。

視線が合う。仁くんが首を傾げながら「ん?」と言った。それだけなのにどうして心臓が大きく揺れたんだろう。



「わ…私を見ないでください…!」

「………は?」



顔を覆った。
見られた分だけ顔が赤くなる。

自分じゃないみたいで怖い。


「おい、千雪どう言う意味…、」

「こ…怖いんです…」

「…は!?…わ、悪い。また俺千雪の事怖がらせて、」


慌てる仁くんと顔を隠して俯く私。
そして笑いを堪える運転手。

学校まで残り少し。