白雪姫は寵愛されている【完】



───────翌日、月曜日。

久々に休み明けの疲れてる身体に鞭を打ち、家を出た。


いつもならバッグの底に入れる携帯は、今日はポケットの中に。大きく揺れるハートのキーホルダー。中々に可愛くて吃驚してる。

見せびらかいしたい訳じゃないけれど、やっぱり自分の目に付くようにしておきたかった。



「…それ、」



車内で仁くんが指さしたのはそのキーホルダー。



「えっと…昨日買ったんです」


「…凹んでるな。不良品か?」


「ち、ちがいます!元々です!」



こんなに綺麗に十字架に凹むわけないですよ!



仁くんの視線はそのままバッグの方に向く。


「…これは?」


そこには行き場を失くした十字架のキーホルダーが。



「これが入るようになっているんです」



目の前でハートの凹みに十字架を入れてみた。



「それ、一人で二個つける為なのか?」

「………そういう人もいます」



きっと恋人や友達とのシェアする用のキーホルダーだと思う。勿論一人で付ける人もいるけれど…それならキャラ物のキーホルダーの方が人気なのかもしれない。


「もし…千雪がいいなら。俺にそれくれないか?」

「え?」

「だめか?」

「だ…だめじゃないですけど…」


少し残念だけど、仁くんが言うなら…。



「…普通はそっちじゃないよな」

「え?そっち…?」



取ろうとしたのはハートの方。
私を見る仁くんの口元が緩んだ。



「そんな嫌そうな顔してまで渡す事ねーだろ」

「い、嫌そうな顔してましたか…?」

「フッ…すげー嫌って顔に書いてあった」



だ…出さないようにしていたのに…。