心配をよそにその花を私の髪にさす。
「…やるよ」
先輩の指がゆっくりと髪を伝い離れていった。
「え!?で、でも…」
か、勝手にお家の物を持って行くわけには…。
「颯太には後で言っとく」
「え、っと…」
どうしよう。
貰っていいのかな…?
どうしていいか分からない私の手を先輩が握った。
「それとも俺がやる物は嫌か?」
「そういう…わけでは…、」
そ…そう言われてしまうと。
貰わざる負えません…。
左右に首を振ると先輩は笑って手を離した。
でも…私みたいな子には似合わないのでは…。
「不安そうな顔すんな…似合ってっから」
隣に座る先輩が笑う。
お世辞だと思う。だけどそう言ってもらえるのは嬉しかった。
「難波先輩」
「ん?」
私の方を向き、首を傾げる。
「ありがとうございます」
ハイビスカスを触りながら静かに笑った。
「っっ……、」
あっ、颯太くんにも言わないと。
難波先輩が言ってくれるらしいけど…私自身でもお礼、言いたいもの。
立ち上がる。
でも、歩けなかった。
振り返ると難波先輩が私の手を掴んでいた。
痛くはない、でも強い力で掴まれている。
「せんぱ、い?」
俯いたまま、何も言わない。
…どうしたんだろう?もしかして具合でも悪いのかな…?
ずっと水の中にいたから…そうなのかもしれません。
「どこか具合────…、」
思いっきり引かれ、倒れ込む私を抱きしめる。
「……へ…?」
吃驚した。
抜け出そうとしても離れない。
この状態から動けなくなった。
私の力では押し返せない。
「…悪い、一分だけ許してくれ」
耳元で声がした。
…難波先輩?
「ど…どこか具合でも悪いんですか…?」
「……そうかも、な」
立ち上がろうとしたけど、私が引っ張り返せなかったから…こうなったと言う事?
「そ、それなら皆さんを呼んだ方が…!」
「千雪ちゃん」
声のトーンが変わった。
「…少し黙ってろ」
ビクッ!
何も出来ないまま私は先輩に身を委ねた。


