見てるだけで充分。
雰囲気だけでお腹いっぱい。
来れただけでも一生分の思い出みたいなものです。
「お気になさらず…私はここにいますね」
私に合わせて楽しめないままなのは、申し訳ないですし…。
難波先輩は「それじゃ、面白くねぇだろ?」と言った後で。
「だから、俺が教えてやるよ」
と、言って笑った。
………へっ…!?
「そ、そんなお気になさらず…!」
まさかの展開だった。
教えてもらうなんてとんでもない。
「んだよ…千雪ちゃんも楽しめなかったら来た意味ねーだろ」
「そ、そんな…先輩は遊んできていただいても…!」
「ほら、上着脱げ。それとも脱がせるか?」
そ、それは……、
「早く脱がねーと…俺が脱がせるぞ?」
「じ、自分で…やります…」
慌てて上着を脱いだ。
その上着を仁くんに渡す先輩。
「っ…慶、」
「心配すんなよ。なんもしねーから」
「……手出したら殴る」
「おー…こえー」
仁くんから怖いオーラが出ている。
難波先輩はビクリとする私の手を握ると、
「行くぞ、千雪ちゃん」
そう言って歩き出した。


