そんな与太話をだらだらとして、どのくらい経っただろう。トイレの順番が回ってくる少し前にメールを確認すると、九十三先輩から「いま正門」「いま東駅」「いま一色駅」と逐一居場所を、しかも徐々に近づいていることを知らせるメールが来ていた。どこのホラーのメリーさんだろう。無視して「私達は紅鳶神社の休憩所です。先輩方が着く頃も境内にいると思います」と返事を打った。
「例の九十三先輩? 群青の先輩ら、本当にお前のこと大好きだよなー」
「女子に飢えているのでは?」
「モテそうな先輩もたくさんいるじゃん、九十三先輩とか。あと能勢さんと蛍さんは普通にモテるだろ」
パチンと携帯を閉じながら、そっと思考を巡らせる。群青の先輩達が、もし、私を”大好き”に見えるのだとしたら、それは先輩達側になにか思惑があって、それを覆い隠すためのものじゃないだろうか。先輩達に“大好き”なんて思われる理由はないのだから。
でも、その答えを探すためにはピースが足りないのだ。なにか一つでもいいと思うのだけれど、なにか一つ、群青の存在理由でも蛍さんの家族構成でも能勢さんのお姉さんのことでもなんでもいい、なにか一つヒントがあれば思考は先に進むはず……。
「……陽菜って、能勢さんの兄弟構成とか知ってる?」
「なに急に。姉いるんだろ、やっぱ姉いる弟が一番モテるって本当なんだな」
「そのお姉さんっていくつ離れてるの?」
「さあ? でも灰桜高校の三年に能勢なんていないし、二歳は離れてんじゃね?」
……さすがに死んだなんて噂はないらしい。噂になるものではないし、陽菜から情報を聞くには限度がありそうだ。
トイレを出ると、陽菜の姿がなかった。前後に並んでいたとはいえ、トイレに行くまでには時間差があったし、出てくるタイミングまで同じというわけにはいかない。
もしかして休憩所から出たのだろうか、と辺りを見回しながら出口に向かっていると、出口に陽菜の浴衣が見えた。ただ、同時に桜井くんと雲雀くんでない男子が二人いるのも分かった。
ナンパだ……。私が行くより桜井くんと雲雀くんを呼び寄せたかったけれど、二人がどこにいるのか分からなかったし、少なくとも休憩所内に金髪と銀髪は見当たらなかった。
諦めて陽菜のもとへ向かうと「え、そうそう。三年六組の人ですよね」と妙に朗らかな声が聞こえてきた。なんだなんだと近づくと、陽菜が私を振り向いて「あ!」なんて私を巻き込む予備発言をした。
「この子とか、その蛍先輩のお気に入りです」
一体何の話……? 胡乱な顔を陽菜へ、そして陽菜をナンパしていた (と思う)男二人組に向ける。そのうちの一人が「へーっ、そうなんだ」と頷きながら咥え煙草を揺らした。髪色は派手だったけれど、うっすらとある髭の痕のせいか、高校生にしては少し年上に見える。
「……どちら様……」
「俺らねー、群青のOBなんだよ」
予想外の属性に目をぱちくりとさせてしまった。群青の、OB?
「なんかねー、話しかけてきて、灰桜高校って言ったら群青のOBだよって言われて、いま蛍先輩と英凜の話してたとこ」
「……なる、ほど……?」
ついじろじろとその二人を見てしまった。高校生より少し上に見えるという直感は間違いではなかったらしい。
「例の九十三先輩? 群青の先輩ら、本当にお前のこと大好きだよなー」
「女子に飢えているのでは?」
「モテそうな先輩もたくさんいるじゃん、九十三先輩とか。あと能勢さんと蛍さんは普通にモテるだろ」
パチンと携帯を閉じながら、そっと思考を巡らせる。群青の先輩達が、もし、私を”大好き”に見えるのだとしたら、それは先輩達側になにか思惑があって、それを覆い隠すためのものじゃないだろうか。先輩達に“大好き”なんて思われる理由はないのだから。
でも、その答えを探すためにはピースが足りないのだ。なにか一つでもいいと思うのだけれど、なにか一つ、群青の存在理由でも蛍さんの家族構成でも能勢さんのお姉さんのことでもなんでもいい、なにか一つヒントがあれば思考は先に進むはず……。
「……陽菜って、能勢さんの兄弟構成とか知ってる?」
「なに急に。姉いるんだろ、やっぱ姉いる弟が一番モテるって本当なんだな」
「そのお姉さんっていくつ離れてるの?」
「さあ? でも灰桜高校の三年に能勢なんていないし、二歳は離れてんじゃね?」
……さすがに死んだなんて噂はないらしい。噂になるものではないし、陽菜から情報を聞くには限度がありそうだ。
トイレを出ると、陽菜の姿がなかった。前後に並んでいたとはいえ、トイレに行くまでには時間差があったし、出てくるタイミングまで同じというわけにはいかない。
もしかして休憩所から出たのだろうか、と辺りを見回しながら出口に向かっていると、出口に陽菜の浴衣が見えた。ただ、同時に桜井くんと雲雀くんでない男子が二人いるのも分かった。
ナンパだ……。私が行くより桜井くんと雲雀くんを呼び寄せたかったけれど、二人がどこにいるのか分からなかったし、少なくとも休憩所内に金髪と銀髪は見当たらなかった。
諦めて陽菜のもとへ向かうと「え、そうそう。三年六組の人ですよね」と妙に朗らかな声が聞こえてきた。なんだなんだと近づくと、陽菜が私を振り向いて「あ!」なんて私を巻き込む予備発言をした。
「この子とか、その蛍先輩のお気に入りです」
一体何の話……? 胡乱な顔を陽菜へ、そして陽菜をナンパしていた (と思う)男二人組に向ける。そのうちの一人が「へーっ、そうなんだ」と頷きながら咥え煙草を揺らした。髪色は派手だったけれど、うっすらとある髭の痕のせいか、高校生にしては少し年上に見える。
「……どちら様……」
「俺らねー、群青のOBなんだよ」
予想外の属性に目をぱちくりとさせてしまった。群青の、OB?
「なんかねー、話しかけてきて、灰桜高校って言ったら群青のOBだよって言われて、いま蛍先輩と英凜の話してたとこ」
「……なる、ほど……?」
ついじろじろとその二人を見てしまった。高校生より少し上に見えるという直感は間違いではなかったらしい。



