ぼくらは群青を探している

「なんで? 笹部くんも間違ってたって気づいたほうが先に進めていいんじゃない?」

「いやいやいや、好きな女に自分の感情否定されるとかマジ死ぬでしょ」


 別に否定しているわけではない。勘違いが行き過ぎた結果なんじゃないかと言いたいだけだ。


「たとえばさあ、英凜、お前が桜井のこと好きだとするじゃん?」

「……? うん?」


 あの桜井くんにライクではなくラブの感情か……。イメージはできないけど、仮定の話なのでよしとしよう。


「で、桜井に告白したときにさ、桜井に『俺が笹部にクソダセェって言ったのでキュンてしてそのまま勘違いした恋じゃね?』って言われたらどうだよ」

「まあそうなのかもしれないなと」

「素直か! しかもそうじゃねえよ! ショックじゃないかって聞いてんだよ!」

「仮定の話だからそれはちょっと」

「お前ーっ」


 陽菜は苦々しい顔で「本当にお前は! お前はロボットか!」ダンダンとわざとらしく地団駄(じだんだ)まで踏む。


「だからあ、言いたかったのは、笹部をフッたのはさあ、お前が好きじゃないって言うから仕方ないけど、笹部が本気じゃないとか勘違いだったとか言うのはやめてやれよって話だよ。言うとしたらそれは笹部で、そんで私らが笹部はフラれたからって本気じゃなかったって言ってやがる、ダセェなって言うんだよ」


 うーん、と腕を組んでまでして考え込んだ。そういうものだろうか。笹部くんが「本気じゃなかった」と言う抽象的な可能性があるのなら、そして自分から言ってしまうとダサイなんて(そし)りを(まぬが)れないのなら、他人に「笹部も本気で告白したわけじゃない」と言ってもらったほうが自尊(じそん)(しん)は守れるのではないだろうか。

 分からない。うーん、と首を捻っていると「……ま、お前はそういうヤツだけどさ」と陽菜のほうが先に諦めた。


「とりあえず今日のところは桜井が意外とイケメンだった。以上!」

「クッソダセェって?」

「あれを特別科の、しかも野球部でイケメンランキング二位の笹部に言えるのがカッコよくね? ほら、灰桜高校ってなんやかんや普通科がバカにされるとこあるじゃん」

「笹部くんのほうがカーストが上に見えるってこと?」

「カーストってなに?」

「……ヒエラルキー、というか。人気度……とはちょっと違うな、クラスの中心人物っていうか」

「あー、なるほど。そうそう、そんな感じ。ほら笹部、胡桃ちゃんと一緒に夏祭り行くくらいにはカステーが高いんだろ」

「カーストね」


 うーん、とまた考え込んだ。桜井くんと雲雀くんはスクールカーストとかそういうものを超越した次元にいるから、カースト上位に物申す勇気みたいなものがあったわけではないと思うのだけど。でもそういう規格を超越できること自体が格好いいといえば、それはそうかもしれない。


「でもなー、雲雀はぶどう飴の食い方がイケメンだったなー。あれあたしもやられてー」

「カステラ、手にもって食べさせてあげればよかったのに」

「え、それ指まで食われるヤツだろ。ヤバ。キュン死ぬ。やればよかったけどあたしだったらきっとやってくれない!」