拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「今のままでは到底結婚予定の恋人同士には見えないだろうね。あっという間に両親に嘘だとばれてしまうだろうな」

 確信をずばりと突かれ、心の中で「ううっ」とうなる。確かに恋人同士どころか友人以下の距離感なのは否めない。

 だけど、男友人すらいたことのない私に、これ以上なにをどうしていいのかわかるわけがない。

 そんな私を見て、東雲さんはひとまず恋人としての設定を作ってくれた。

『出会って間もない』ということはそのまま生かし、『私が彼からのアプローチを受けて、結婚前提の付き合いを始めたばかり』とすることにした。それなら多少のぎこちなさは初々しく見えるはずだから大丈夫だろう、と。

「わかりました……」

 必要以上にべたべたしなくていいことがわかり、ほっとした――が。

「だけどさすがに、今のままじゃ恋人だとは信じてもらえないだろうね」

 ですよね……。

 再びがっくりしかけたら、思わぬ言葉が飛んでくる。

「試しにハグでもしてみる?」
「無理です」

 間髪入れずに答えると、彼はくつくつと肩を揺らして笑った。

「そんなに笑わなくても……」

 恥ずかしいやら居たたまれないやらで、顔が熱い。あまり赤面する方ではないのに、彼といるとなんだか調子が狂ってしまう。