拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「わかりました。では来週の土曜日で」
「助かるよ。ありがとう、美緒。急なことで大変だと思うけど、よろしく頼むよ」
「はい」

 うなずいた後、クロックムッシュを口に運びながら、(きた)る二週間後についてのことで頭がいっぱいになった。

 一度引き受けたからには、しっかりと任務を果たそうと心に誓う。どう考えても私では釣り合いが取れないとは思うが、私を選んだということで彼が悪く思われない程度にはきちんとして行きたい。
 幸い洋服はあのとき津雲屋で彼が買ってくれたものの中に、よそ行きの素敵なワンピースがあったので大丈夫なはず。あとは前日までに美容院に行って――

「――緒」

 手土産も用意しなきゃ。やっぱり津雲屋で買うのが一番だろうか。あの後、津雲屋も東雲グループのひとつだと知ったのだ。

「みーーお」

 呼ばれていること気づき、はっと顔を上げると、すぐ目の前に端正な甘いマスクがあった。

「きゃっ」

 思わずのけ反ると、椅子の背もたれに背中がぶつかった。離れてください! と口にするより早く、彼が上体を元に戻す。

「やっぱり少し練習が必要みたいだな」

 彼が腕組みをしてなにやら考えむように言う。