拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 せっかくだからおいしいお茶と一緒に味わおうという話になり、私がキッチンで紅茶を入れている間に、彼はスーツを着替えてくることになった。

 琥珀糖を食べたせいか、忘れていた空腹を思い出し、なにか軽くつまめるのも欲しくなる。
 冷蔵庫にチーズやハムがあったので、簡単なクロックムッシュを作ることにした。

 クロックムッシュはパリのカフェが発祥のトーストで、ハムとチーズを挟んだパンを、フライパンで焼いたものだ。本場ではホワイトソースをかけるけれど、私がいつも作るのは卵液をからめたフレンチトースト風の簡易版だ。

 東雲さんも食べるかしら……。

 夕食を取ったのかどうかわからないけれど、念のため多めに焼いてみることにする。彼が食べなければ、明日の朝食にすればいい。
 バターを入れたフライパンでパンを焼いていると、彼が二階から下りてくる気配がした。

「なんだかいい匂いがするね」

 キッチンに顔をのぞかせた彼が言う。

「夕飯がまだだったので、なにかお腹にたまるものも欲しくなって。東雲さんはもう食べ――」
「いや、まだだ」