拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「きれい……」

 箱の中には四角い半透明のお菓子が詰められている。ひとつひとつが半透明で、まるでガラスのモザイクタイルみたいだ。

 きらきらと輝くような美しさにくぎ付けになっていると、「食べてごらん」と声をかけられる。
 きれいすぎて食べてしまうのがもったいないような気がしたけれど、妙にじっと見つめられているので、迷った末、端っこにある薄紅色のものをつまんだ。

「いただきます」

 ぱくりと口に入れる。軽く噛むとしゃりっとした歯ごたえに続いて、柔らかなゼリーの食感がした。直後、口の中に甘酸っぱいイチゴの味が広がる。

「おいしい」
琥珀糖(こはくとう)だよ。京都土産にいただいてね。そんなに喜んでもらえるなんて、持って帰ってきてよかったな」
「琥珀糖……」

「遠慮せずにもっと食べて」と言われて、口の中に残る上品な甘さに抗えず手を伸ばす。山吹色のものを口に入れると、しゃりっという食感の後に、南国の果物特有の甘い香りが口いっぱいに広がった。

「マンゴーだわ。すごい濃厚……」

 口元を手で押さえながらつぶやく。

「相変わらずいい顔で食べるな。食べさせがいがあるよ。他にはどんなものがすき?」

 餌づけ作戦? ――と思わなくもないが、彼があまりににこにこしながら尋ねるので、素直に甘いものと果物がすきなことを話すと、「覚えておくよ」と返ってきた。