拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「その顔は信じていないね?」

 慌てて両手で頬を押さえた。

 私、今顔に出ていた?

 昔からよく『なにを考えているのかわからない』と言われてきた。感情が顔に出にくいうえに、思っていることを口に出すのも苦手なのだ。

 戸惑う私を見て、東雲さんはふふふと笑う。

「美緒は感情表現が控えめなだけで、無表情ではないよ。むしろ表情を作ったりしない分、わかりやすいかもしれないね」

 言われてみれば、わざと表情を作ることをしたことがない。どうせ表に出ないのだから、あえてそんなことをする必要もなかった。

「そして今は、かなりお疲れの様子だね」
「え!」 

 すごい。そんなことまでわかるなんて……。

 驚きを通り越して感動を覚える。彼が洞察力に優れているのは、生まれ持ったものなのだろうか。それとも社長という役職のなせる業なのか。
 どちらにせよ、こんなふうに私の感情を読むことができる人は、家族以外では数えるほどしかいない。

「そんな美緒にちょうどいいものがあるんだ」

 東雲さんはそう言うと、カバンの中に手を入れて小箱を取り出した。

「はい、どうぞ」

 ふたを開けて差し出され、思わず「わあ」と声が出る。