拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「どうして私のものばかり次から次に……」

 きちんと説明してもらうまで出された料理に手を付ける気はない。
 目の前に並んだ芸術品のような先付けを前にして、膝の上に置いた両手をギュッと握りしめて彼を見つめると、私の気迫が伝わったのか、東雲さんはふうと息を吐いてからようやく口を割った。

「美緒がアパートから荷物を十分に持ち出せなかったのは、僕が急かしたからだろう? だから不足しているものをこちらで用意するのは当然のことだ」
「私は特に不自由していません。だから今までの分は全部キャンセルしてください」

 幸い、彼は選んだものをスタッフに渡しただけでまだ会計をしていない。その証拠にショッピングバッグひとつない。取り置き状態ならキャンセルも簡単なはずだ。

「それは無理だな」

 あっさり却下されたけれど、こちらもそう簡単には引き下がれない。

「どうしてですか」
「選んだものはもう車に運んでもらってある」
「え……! でも支払いが……」
「ああ、外商につけたんだよ」

 予想外の答えに両目を見開いた。