拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 買い物の後、せっかくだから夕食も食べて帰ろうと言われて、最上階のレストランフロアへとやって来た。

 週始めだというのにレストランフロアは多くの人でにぎわっており、空席待ちが出ている店も少なくない。そんな中、東雲さんが足を向けたのは、人気店や有名店がひしめくフロアの中でひと際高級感あふれる老舗日本料理店だった。
 外には順番待ちの客がいたにもかかわらず、彼が顔を見せた途端、すんなりと奥の個室に案内された。

「いったいどういうことですか⁉」

 ふたりきりになった途端詰め寄るように言った私に、彼はきょとんとした表情をした後首をかしげた。

「和食はだめだった?」
「いえ、和食はすきです――ってそうではなくて! この『寄り道』自体がどういうことを聞いています」

 あの後、支配人がいなくなるとすぐに、東雲さんはリビング用品のコーナーを後にした。茶碗を諦めてくれたのだとほっとしたのもつかの間、別の階でまた私のものを選び始めた。

 日用品や化粧品、洋服にパジャマ。極めつけにはランジェリーコーナーで足を止めようとした。全力でどうにかその場から引き離すことができたけれど、あのときのことを思い出すだけで、また変な汗が吹き出しそうになる。