「帰る前にちょっと寄りたいところがあってね。大丈夫かな?」
「はい。私の方は特になにも」
「そうか、よかった」
東雲さんの寄りたいところってどこだろう。そんなことを考えていると、後ろから声がした。
「おまえ……男がいたのか」
「え!」
驚いて振り返ると、長澤さんが怖い顔で東雲さんを見ている。『一緒に帰ろう』という智景さんの言葉を誤解したようだ。
「いえ、この人は――」
そこまで言って口が止まる。なんて説明したらいいのだろう。
居候先? ――ということをこのふたりに知られるのはなんとなく嫌だ。
じゃあ友人? ――というほど仲良くもない。
どうしよう……。私が東京に友人や親戚が誰もいないことは、長澤さんは知っている。
言いよどんでいると、さっと肩を抱かれた。
「……っ」
驚いて仰ぐと、東雲さんは一寸の隙もない笑みを浮かべてふたりの方を見ていた。
「美緒の同僚の方ですか? 彼女がいつもお世話になっております」
長澤さんと久保田さんが同時に両目を見開く。あ、これは絶対私と東雲さんとの関係を誤解したな、と思った。違いますと言いたいのに、東雲さんの言葉には訂正すべき箇所はない。
「はい。私の方は特になにも」
「そうか、よかった」
東雲さんの寄りたいところってどこだろう。そんなことを考えていると、後ろから声がした。
「おまえ……男がいたのか」
「え!」
驚いて振り返ると、長澤さんが怖い顔で東雲さんを見ている。『一緒に帰ろう』という智景さんの言葉を誤解したようだ。
「いえ、この人は――」
そこまで言って口が止まる。なんて説明したらいいのだろう。
居候先? ――ということをこのふたりに知られるのはなんとなく嫌だ。
じゃあ友人? ――というほど仲良くもない。
どうしよう……。私が東京に友人や親戚が誰もいないことは、長澤さんは知っている。
言いよどんでいると、さっと肩を抱かれた。
「……っ」
驚いて仰ぐと、東雲さんは一寸の隙もない笑みを浮かべてふたりの方を見ていた。
「美緒の同僚の方ですか? 彼女がいつもお世話になっております」
長澤さんと久保田さんが同時に両目を見開く。あ、これは絶対私と東雲さんとの関係を誤解したな、と思った。違いますと言いたいのに、東雲さんの言葉には訂正すべき箇所はない。



