拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「ちょっと!」

 振り返ると久保田さんがヒールの音を響かせながらやってくる。私の前で足を止めた彼女は、思いきりこちらを睨みつけた。

「どういうつもり!」

 今にもつかみかかってきそうな勢いに一歩下がる。なにがですかと尋ねたら彼女の眉が跳ね上がった。

「とぼけないで! 長澤さんにちょっかいをかけるなんて身の程知らずにもほどがあるわ! 『難攻不落の令和なでしこ』だなんて言われてちょっとちやほやされたからって、調子に乗ってるんじゃないわよ!」

 猛烈な勢いでまくし立てられ、目を見張ることしかできない。

 難攻不落? 令和なでしこ? 

 どちらも初めて聞く言葉だけど、自分のことを指すなんて到底思えない。ただ、『ちやほや』というのが、周囲の人の親切のことを指すとしたら、大変心外だ。

 本社に異動してきたばかりのころ、男女や部署を問わず色々な人から声をかけてもらうことがあった。
 遠い九州から初めて上京してきたということで、気を使ってくれたのだ。

 中には福岡や九州他県の出身者や支社経験者の方もいて、決して女性としてどうこうというわけではない。もちろん飲みに誘われることもあったが、社交辞令だとわかっているため真に受けず、お礼だけ言って謹んでお断りしてきた。