拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 そもそも出張先にいるはずの智景さんが、どうして常務室へ現れたのだろう。しかも私の窮地を知って救いに来てくれたようだった。

 もう少しですべてが繋がりそうな気がするのに、なにかが足りずにもやもやする。

「覚悟はできたのですか、美緒さん」

 かけられた声にはっとして顔を上げたら、万由美さんと目が合った。あの日の続きを問われているのだとすぐにわかる。

 私はまだ智景さんに自分の気持ちを告白していない。その状態で自分の覚悟を話すのはかなりの勇気がいる。けれどここまで来た以上、きちんと自分の考えを万由美さんに伝えるしかない。

 緊張で止まりそうになる息をどうにか吸い込み、覚悟を決めたところで、智景さんが先に口を開いた。

「僕は美緒以外の相手と結婚するつもりはありません」
「智景!」

 それまで平然としていた万由美さんが動揺をあらわにした。私は驚きのあまり声すら出せない。

「母さんが望む結婚でないと許せないというなら、僕は東雲を出ます」
「あなた……自分がなにを言っているかわかっているの? そんな勝手をお父様が許すはずがありませんよ」
「どういう意味かわからずにものを言うほど子どもではありません。別に許してもらおうとも思っていませんしね」
「智景!」