拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

 ここまでの流れをまくし立てた久保田さんに、智景さんはなにかを考え込むようにあごに手を当てた。

「証拠ならある」
「え!」
「松井常務、あのアプリにログインしてください」

 智景さんが言うと、常務は「あ!」となにかを思い出したように、スーツのポケットからスマートフォンを取り出した。
 いったいなにをするのだろうと、常務に注目が集まる。

「東雲商事では、グループ内すべての役員室に防犯カメラを設置している」

 智景さんの説明に、その場がどよめいた。

 防犯カメラは、役員の身の安全や来客とのトラブル回避が目的だそうだ。防犯カメラの存在は秘密にしているわけではないが、わざわざ公言してもいない。設置箇所なども役員本人しか知らず、秘書にも知らせることはない。

 カメラで撮影されたものは、リアルタイムはもちろん、録画されたものも専用のアプリを使ってスマートフォンで見ることができる。
 アプリのパスワードは役員本人のみしか知らず、本社で捜査チームが立ち上げられるような重大な事件が起きた場合のみ、アプリ会社にパスワードを解除してもらって録画を確認することもあるだろうと智景さんは言った。

 今のところそんな事案が発生したことはないそうだ。それゆえ松井常務も、この部屋に防犯カメラがあることをすっかり失念していたらしい。