拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「美緒、お待たせ」
「智景さん……!」

 どうしてここに⁉ 

 視察から戻ってくるのはまだ先のはずだ。

「おまえ! どうやってここまで……。常務、こいつです! こいつが滝川と一緒にいたあやしいやつです!」

 長澤さんは言いながら立ち上がると、智景さんを睨みつけ、デスクに置かれた電話機に手を伸ばした。

「ここは部外者立ち入り禁止だ。警備員を呼ぶぞ」

 受話器を持ち上げたそのとき。

「やめないか!」

 これまでになく常務の鋭い声が飛んだ。

「常務、なぜですか! この男は滝川がうちの情報を流そうとしたやつに違いな――」
「やめろと言っているんだ!」

 常務の厳しい一喝に、シルバーリムの奥の瞳が大きく見開かれる。

「この方が情報リーク先⁉ そんなバカなことがあるか! この方は東雲商事社長のご令息だぞ!」
「え……東雲社長の……」

 おばけでも遭ったような顔の長澤さんに、智景さんは優雅な笑みで「ECアドバンス開発の東雲だ」と名刺を渡す。

 長澤さんが声を失い、自分も名刺を出すどころか、名乗ることすら忘れている。いずれは親会社を継ぐ彼が、わざわざ子会社に産業スパイを送り込むはずがないことに気づいたのだろう。