拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

「なんの話だ」

 常務がどういうことかと長澤さんを見る。

「実はつい最近、滝川さんからの誘いを受けまして、その際、あいりさんと真剣にお付き合いしていると断ったのです」
「伯父様、滝川さんって、いつもあいりにばっかり厳しいの。貴司君と付き合っているあいりのことを嫉妬していたんだわ……ひどい」
「違います! なにもかも全部……私はそんなことをしたことなんてありません」
「あいりのこと嘘つき呼ばわりするの⁉」

 両手で顔を覆った久保田さんが嗚咽を上げた。彼女の肩を長澤さんが抱き寄せ、こちらを思い切り睨む。

「スパイの次は復讐か。いや、そのどちらともか」
「違います! 私はそんなこと考えたことも――」
「もういい、やめなさい!」

 常務の一喝に、その場がしんと静まり返った。

「滝川君、正直に話すなら今だ。今ならまだ、私の裁量で事を最小限に収められないこともない」

「……どういうことですか」と問うと、松井常務は、今日一日社内調査をした結果、私の無実を証明できるものはなにも出なかったと口にした。明日には社長やほかの役員に報告を上げるため、産業スパイ調査が本格的に始まるだろうという。

「きみはまだ若いんだ。やり直すなら傷は浅い方がいいんじゃないのかね」