拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない

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 翌日、私は定時直後の時間を狙って、再び常務室を訪ねた。仕事柄、役員の在室時間はおおむね把握している。

 ノックをすると中から出てきた長澤さんが、一瞬で眉をひそめた。

「なにをしに来た。謹慎中だろうが」

 ぞんざいな口調でそう言った彼は、私に表の顔で接することはやめたようだ。こんなに裏表が激しい人だと、どうして気づけなかったのだろう。

「松井常務ともう一度話をさせてください」
「常務はお忙しい。結果がわかるまで家でおとなしくしていろ」

 取り付く島もない態度でドアを閉めようとするので、ドアノブを必死に両手で押さえる。

「なにを騒いでいるんだね」
「いえ、なんでも――」

 部屋の中から聞こえた常務の声に、長澤さんが振り返った一瞬の隙を見逃さず、私はドアの間から体を割り込ませた。

「失礼いたします」
「あっ、おい!」

 驚いた長澤さんが止めようとするのを振り切って、部屋の中へ飛び込んだ。